当事者と家族の会について(2015/08/01, 教研通信119号より)

NPO法人教育研究所 理事長・教育コンサルタント 牟田武生

20数年前、教育研究所には「あしたばの会」という親の会がありました。
この会は、不登校の親が自発的に、財政事情の悪い教育研究所を支援していこうとする親の会でした。当時会員は150名以上の方が参加していました。
教育研究所の支援と低所得の不登校の子が、当時、我が国で唯一、学校の出席が認められていた教育研究所に通えるように財政的に支援する自助機能を持っていました。しかし、役員さんのボランティア仕事と継続的な寄付の負担を考え、活動5年で所長の私が閉鎖し、自らで支援していきましたが、苦しいものでした。
20数年経ち、現在やっと文科省がフリースクールに対する助成金について委員会をつくり審議に入っています。何をするにも時間がかかる国です。
時間の経過とともに被害者が増加し、ひきこもり問題は高齢化・長期化が進み、深刻な事態になっています。
今回つくる会はひきこもり当事者と家族の会です。ひきこもりの人の社会復帰を図る目的でつくられます。
カウンセリングや相談だけで社会復帰できる人(にいかわ地域若者サポート支援をも含む)
宇奈月自立塾で生活訓練と就労支援を受け自立する人、
しかし、それらに参加できない重篤のひきこもりの方もいます。
そのままにしておけば、家族自体が生活困窮になります。そして、両親の死後は、生活保護の生活になる可能性が大です。そこで、厚労省の援護局は2年前から調査研究として、ピアサポート事業(元当事者を研修して、ひきこもり当事者を訪問する)を、今年4月からはじまった生活困窮者自立支援法に則った全国の自立相談支援センターにおけるひきこもりのガイドライン作成、そして、居場所つくり、自主事業の経済的支援事業に入っていきます。
その中心になるのが全国引きこもりKHJ親の会(家族会連合会)会長池田佳世です。
私たちの会も横浜支部になります。すでに神奈川には神奈川県虹の会がありますが、横浜にはありません。会の名前は横浜の市花からとって、「横浜ばらの会」としたいと思います。
宇奈月にも、その会の支所をつくりたいと思ってます。
総会で初代会長に鈴木恵美子さんがなってくれました。ご主人が協力して頂けるそうです。みなさんで一緒によい会をつくってみませんか?

家族会と当事者会の必要性 〜小手先の支援だけでは限界に〜(2016/03/01, 教研通信121号より)

「不登校・ひきこもりから回復するための土台になるものは何ですか」と質問されることが多い。心因的な理由で、そのような状態に陥ってしまった多くの人たちは、対人不信や自信喪失から自尊感情や自己有用感が持てない。さらに、これ以上、自分自身が傷ついてしまうと自己が崩壊するのではないかという、生存の危機に近いような感情に襲われる。
それを回避するために、生理的な自己統制として、うつ病的な症状が現れ、生存機能を維持していくことが自然と起るのではないかと考えられる。なかには、その統制がうまくいかず、初期の段階でうつ病を悪化させ、自死に至る人もいる。
戦前の日本社会や海外では、不登校やひきこもりの症状が散見できず、生物学的な捉え方だけでは証明できない壁に突きあたる。では、何に問題があるのか、阪神・淡路大震災の時、震災直後は不登校やひきこもりの数が減少した。被害者や地域に対して、様々な生きるための支援が入り、ライフラインと社会インフラが整備され、ほっと一息が付き、生活が再建されると、再び、爆発的に不登校・ひきこもりが増えた。
それらの心理的な症状は以前にも増して深刻だった。肉親や血縁者、友人を亡くした喪失感、大震災のトラウマが一気に被災者を襲い、その症状はさらに重くなっていた。
東日本大震災から5年、人々の暮らしは、まだ充分に改善していないが、落ち着きを取り戻しつつある。起って欲しくないが、阪神・淡路大震災のように、そのような被害者が増加したら、この仮説は成立してしまう。
人類は生存が一定程度保障され、安心感が生まれると、次に求めるのは、愛情や信頼感である。これが、家族や廻りの人から感じられなくなると、孤独や不安に襲われる。それらが充分にないと、ストレスを誘発させ、それが引き金になり、体調不良の原因になる自律神経の失調の状態になるのではないか、不登校・ひきこもりが長期化するのは、人とひとの絆が感じられなくなるからだと考えると、土台となるものは、人間関係においての愛情や信頼感等の“絆”ではないだろうか。
核家族化の中で、効率と利益優先でライフワークバランス考えがない企業経営者のもとで働く人たちは忙しい。長時間労働はあたり前、年間で欧米の2倍近く働くと、自ずと家族での会話の少なくなり、子どもとの情緒的つながりや信頼関係は薄くなっていく。
そんな家族の中ではじまるのが、子どもの孤食、たとえ、家族一緒での食事があっても心が通い合わない。さらには、地域社会で、人とひとの結びつきの脆弱化を大人達は、爽やかさっぱりでストレスを感じなくてよいとする。
ひと回避社会の成立の中では、子どもや若者のコミュニケーション能力、対人関係能力、社会性が育たないばかりか、人間として機能しなくなり、子どもや若者は、それを満たしてくれる現実逃避した生き方としてのオタク化やネット依存が進行するのは、やもうえない。
子育てはお前に任せてあるという無責任な父親。
個性的であれ、成績もよくと掛け声をかける母親。
集団に迎合しないと成績が良くならない集団化一斉詰込みの学校教育という矛盾に気が付かず、子どもを激励する親たちによって、子どもの心は切り裂かれていく。
さらには、長期化した不登校やひきこもりの子を抱えても、その意味がよくわからず、高校や大学に進学すれば問題は解決したと思いこんでしまう。
ひきこもりやニートの若者を抱え、働けば、就職さえすれば、解決と考える親たちも同じ思考の人達である。しかし、そんな子どもや若者が学校で、職場で、歯を食いしばって頑張っても、長続きはしない。
親子の信頼関係や愛情としての情緒的な交流が自然とあり、愛情豊かな還れる家があって、不登校・ひきこもりの子どもや若者は、学校に職場に行ける。また、外で嫌なことやストレスを抱えても、傷ついても、家に帰り、癒される親を含め家族がいれば、明日また学校に職場にいける。
しかし、長年、自分なりに努力しても、10年、20年、30年とひきこもりが長期化してくると。親も若者といえなくなった当事者も、孤立が深まっていく、そんな、家族や当事者のためにできることから始めるとしたら家族再生である。
当事者の人として生きる意味の獲得、新たな情報の交換、参加者の相互信頼感の獲得、生きる新たな価値観を生み出す努力、そして、当事者らしい生き方を通しての自立への支援等の根本問題を一緒に考えて行く時である。
そこに、家族の会と当事者の会の本当の意味がある。

参考資料
文科省追跡調査
平成5年度中学3年(現在37歳)と平成18年度中学3年生(現在24歳)比較
高校進学率 65.3%→85.1%
高校中退率 37.9%→14.0%
大学・短大・高専への就学率 8.5%→22.8%
専門学校・各種学校への就学率 8.0%→14.9%
進学率、中退率は大幅減少しているが、ひきこもり・ニートは増加している。
経済的環境の悪化もあるが、進学することによって問題解決ができた分けではない。
また、18年度調査「不登校継続理由」からの分析から、
「無気力型」40.8%、「遊び・非行型」18.2%、「人間関係型」17.7%、「複合型」12.8%
「その他型」8.7%に類型化できるようになった。(平成26年7月発表文科省)
心因性より、無気力型が最近の若者に急増している。これらの希望を失ったタイプに対する対応は「様子をみる」「受容的対応」だけでは長期化していく。

ひきこもりの当事者と家族の会(横浜ばらの会(仮))発足にあたって(2016/03/01, 教研通信121号より)

広報担当 大竹信子
この家族会の目的は、ひとえに、ひきこもりの人(不登校・不就労などの社会的ひきこもりも含む)の社会復帰を図る事にあります。
ただし、既存の就活・就労スタイルによるものではなく、各自の能力や素質を使ってできることを「働く」ということにつなげていくことができれば、それが本人達にとっての「働き、生活する(社会復帰)」となるのかもしれません。
今は不登校や、不就労・引きこもり状態であっても、このままで良いと思っていないのなら、少しずつでも変わることができるような、何かを始めるきっかけが必要でしょう。そのきっかけについて、親たちは、情報を収集・共有し、提供していければと思います。
本人が希望のある人生を歩んでいくことができるよう、私達と一緒に、知恵を出し合い、励まし合って、バックアップしていきましょう。会への参加をお待ちしております。